生活防衛資金という言葉を初めて見ると、何か特別な口座や商品のことかと思うかもしれません。
そうではありません。普通の貯金の一部に、「これは使わない」という札をつけただけのものです。
何のために置くのか
目的はひとつです。収入が止まったり減ったりしたときに、生活を続けるため。
病気やケガで働けなくなる。会社の都合で仕事がなくなる。転職の間が空く。どれも起こりうることですが、起きたとき、家賃も食費も止まってはくれません。
公的な制度で給付が受けられる場合もありますが、申請してから振り込まれるまでには時間がかかります。その間を埋めるのが、このお金の役割です。
「貯金」との違いは、目的があるかどうか
普通の貯金は、いつか何かに使うためのお金です。旅行、引っ越し、車の買い替え。
生活防衛資金は逆で、使わずに置いておくことが目的です。使う場面が来ないのがいちばん良い、という性質のお金です。
同じ口座に入っていても構いません。大事なのは、頭の中で分けておくことです。「貯金80万円」ではなく「使ってよい20万円と、置いておく60万円」と考える。この区別があるだけで、大きな買い物の判断がしやすくなります。
どこに置くか
置き場所には条件があります。必要になったその日に引き出せることです。
そのため、生活防衛資金は普通預金で構いません。金利がほとんどつかないことを気にする必要もありません。このお金は増やすためのものではないからです。
逆に、次のような場所には置かないでください。
投資に回してはいけません。 必要になるのは、たいてい景気が悪いときです。そういう時期は相場も下がっていることが多く、いちばん売りたくないタイミングで売る羽目になります。
iDeCoや企業型DCも数えないでください。 これらは原則60歳まで引き出せないので、いざというときには使えません。残高が増えていても、生活防衛資金としては存在しないものと考えてください。
満期まで引き出せない定期預金も、避けた方が無難です。
いくら置くか
一般的には「生活費の3ヶ月分」「6ヶ月分」といった目安が使われます。
生活費が月20万円なら、3ヶ月分で60万円です。まずはこのあたりを目安に置いてみて、しっくりこなければ後から調整すれば構いません。
何ヶ月分が適切かは、収入の安定性や家族構成によって変わります。この決め方については生活防衛資金は何ヶ月分が正解か、という問いを見直すで詳しく扱っています。
決めておくと、使う側が楽になる
この金額を決める本当の効果は、実は「守り」の方ではありません。
下限が決まっていないと、いくら貯金があっても、大きな買い物のたびに不安になります。判断する基準がないからです。
下限を決めておけば、「ここを下回らない範囲でなら使ってよい」とはっきりします。使わないと決めたお金があるからこそ、残りは安心して使える。生活防衛資金は、我慢するための仕組みではなく、その逆のものです。