万一のときに家族の生活がどうなるかを考えるとき、多くの人がいきなり「いくら備えるべきか」から入ります。ただ、その前に確認しておくべき前提があります。公的な遺族年金から、すでにいくら支給されることになっているのか、という部分です。
ここが分からないまま必要額を考えると、備えが過剰にも過小にもなり得ます。
遺族年金は2階建てになっている
日本の公的年金は2階建ての構造をしていて、遺族年金もそれに対応しています。
遺族基礎年金は、国民年金からの給付です。支給の対象は、子のある配偶者、または子に限られます。ここでいう「子」は原則として18歳になった年度末までの子を指します。逆に言えば、子どもがいない場合や、子どもが成長して要件を外れた後は、この部分は支給されません。
遺族厚生年金は、厚生年金からの給付です。厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に、亡くなった人の報酬比例部分の一定割合が支給されます。こちらは子どもの有無が支給の絶対条件にはなっておらず、配偶者などが対象になります。
会社員と自営業で、前提が大きく違う
この構造から、重要な違いが出てきます。
会社員(厚生年金加入者)の場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が対象になり得ます。子どもがいる期間は2つが重なるため、支給額は比較的まとまった金額になります。
自営業やフリーランス(国民年金のみ)の場合、遺族厚生年金はありません。遺族基礎年金だけになるため、子どもがいなければ遺族年金は支給されないことになります。同じ年収でも、加入している年金制度によって、残される家族の前提はまったく違うということです。
独立を検討している場合、この違いは収入や税金の話と同じくらい確認しておく価値があります。独立時の家計そのものについては会社員からフリーランスへ、収入が漸増する期間のシミュレーションで扱っています。
支給が減るタイミングがある
もうひとつ見落とされやすいのが、遺族年金はずっと同じ金額が続くわけではないという点です。
子どもが18歳の年度末を迎えると、遺族基礎年金は終了します。会社員の家庭の場合、この時点で支給額が大きく下がることになります。子どもが独立する時期と重なるため生活費も変わりますが、収入側の変化としては相応に大きなものです。
なお、一定の要件を満たす妻には中高齢寡婦加算という加算が設けられているなど、条件による例外もあります。金額や要件は制度改正で変わることもあるため、具体的な金額を知りたい場合は年金事務所で確認するのが確実です。
必要額は「不足分」であって「生活費全額」ではない
前提が分かると、考え方が整理されます。
万一のときに必要になるのは、残された家族の生活費の全額ではありません。そこから遺族年金、遺族自身の収入、すでにある貯蓄を差し引いた不足分です。
この引き算をせずに生活費の総額だけを見ると、必要以上に大きな金額を備えようとすることになります。備えることそのものは悪くありませんが、そのために今の生活を必要以上に切り詰めているとしたら、判断の材料が足りていないだけかもしれません。
自分の場合の遺族年金の見込み額は、ねんきん定期便だけでは分かりません。年金事務所で加入記録をもとに試算してもらうのが確実です。定期便の読み方そのものについては、ねんきん定期便の金額を、そのまま将来の年金額だと思わないで扱っています。