奨学金の返済が続いている間、「返済を優先すべきか、貯蓄や投資を先にすべきか」で迷う人は多いと思います。
利息の話はよく語られます。ただ、キャッシュフローの面では、あまり指摘されない効果がもうひとつあります。
返済は、下限を押し上げている
手取り22万円、家賃7万円、その他の生活費8万円。ここに奨学金の返済が月1.5万円あるとします。貯金は50万円、NISAを月1万円積み立てている状態です。
このとき毎月の生活費は16.5万円で、生活防衛資金の下限はその3ヶ月分の49.5万円。貯金50万円は、これをぎりぎり上回っています。
毎月4.5万円ずつ増えるので、1年後には104万円になります。返済と積立を並行しても、家計は回っています。
注目したいのは、返済が下限の計算に入っていることです。
返済は毎月必ず出ていくお金で、収入が止まった期間もそのまま発生します。生活費と同じく守らなければならない支出なので、その分だけ下限が上がります。
実際、この奨学金を完済すると、下限は49.5万円から45万円に下がります。返済額1.5万円の3ヶ月分です。
つまり返済が終わると、利息の支払いがなくなるのとは別に、必要な現金の量そのものが減ります。返済中は、返済額の3ヶ月分を余分に持っておく必要がある、とも言えます。
だからといって、急いで返さない
では繰り上げ返済を優先すべきかというと、そこは慎重に考えてください。
同じ条件で、残り60万円を一括で返済したと仮定すると、返済直後の残高はマイナスになります。手元に50万円しかないので実際には不可能ですが、近い金額を返せば生活防衛資金はゼロになります。
返済が終われば下限は下がります。ただ、下がった下限を守る現金すら残っていないのでは意味がありません。
繰り上げ返済で得られるのは、利息の軽減と将来の下限の引き下げです。どちらも、今ある防衛資金を取り崩してまで前倒しするものではありません。
積立を止めても、下限は下がらない
もうひとつよくある問いが、「返済中はNISAの積立を止めるべきか」です。
積立1万円を止めると、毎月貯まる額は4.5万円から5.5万円に増えます。一方で、下限は49.5万円のまま変わりません。積立は生活費ではなく、収入が止まれば止められるお金だからです。
ここが返済との違いです。返済は下限を押し上げますが、積立は押し上げません。
現金を早く厚くしたい時期に積立を減らすのは合理的な判断です。ただそれは下限を下げるためではなく、単に貯まる速度を上げるための選択だ、という区別はしておく価値があります。優先順位の考え方は、NISAの積立額と生活防衛資金、どちらを優先すべきかでも整理しています。