手取りが月5万円増えました。少し良い部屋に住み、外食を増やす。増えた分を、そのまま生活に充てたとします。
このとき、毎月貯まる額は変わりません。収入が5万円増えて支出も5万円増えたのだから、当然です。家計簿を見ても、悪くなったところは見当たりません。
それでも、ひとつだけ悪くなっている数字があります。
貯金が同じでも、持つ月数が減る
手取り32万円、生活費22万円、貯金150万円。毎月7万円ずつ増えている家計を考えます。
この状態なら、収入が止まっても手元の150万円で6.8ヶ月しのげます。
ここで昇給分5万円を全額生活費に回すと、生活費は27万円になります。貯金は150万円のまま、毎月貯まる額も7万円のまま。それでも、しのげる期間は5.6ヶ月に縮みます。
収入が増えて、貯まるペースも落ちていないのに、耐えられる時間だけが1ヶ月以上短くなりました。
月々の収支は、耐久力を教えてくれない
理由は単純です。毎月の収支は「入ってくる額 − 出ていく額」なので、両方が同じだけ増えれば動きません。この数字が表しているのは貯まる速度だけです。
一方、いざというときに問われるのは耐えられる長さです。収入が止まった状況では、増えた収入は消えて、増えた支出だけが残ります。
同じ理由で、生活防衛資金の下限も上がります。生活費22万円のときは3ヶ月分で66万円でしたが、27万円になれば81万円です。守るべき下限が15万円分、高い位置に移動しています。
全部を回さなければ、両方が良くなる
では生活水準を上げてはいけないのかというと、そうではありません。配分の問題です。
同じ昇給分5万円のうち、3万円だけを家賃に回した場合。下限は75万円に上がりますが、毎月貯まる額は7万円から9万円に増えます。残り2万円が貯蓄側に回るからです。
下限が上がっても、それに追いつく速度も上がっている。全額を生活費に回した場合は、下限だけが上がって速度は据え置きでした。この差が効いてきます。
上げる前に、下限を引き直す
昇給の後に確認しておきたいのは、順番としてはこうなります。
生活費を上げたら、新しい下限はいくらになるか。今の貯金はそれを上回っているか。上回っていないなら、追いつくのに何ヶ月かかるか。
とくに家賃は、一度上げると簡単には戻せません。契約期間もあれば、引っ越し費用もかかります。上げてから気づくより、上げる前に確かめておく方が楽です。
生活水準を上げること自体は、悪いことではありません。ただ、上げた瞬間に必要な現金の量も増えるということは、毎月の収支を見ているだけでは分かりません。固定費が効き続ける仕組みについては、節約は続くのに、家賃の見直しが後回しになる理由でも触れています。