単身赴任が決まって、会社から手当が出ると聞くと、それで収支は埋まるものと考えたくなります。
実際、手当はかなりの部分を埋めてくれます。ただ、埋めてくれないものがひとつあります。
拠点が2つになると、下限が1.5倍になる
手取り40万円、家族の生活費が月27万円という家庭を考えます。貯金は200万円、毎月10万円ずつ増えている状態です。生活防衛資金の下限は、生活費3ヶ月分の81万円。
ここに赴任先の生活が加わります。家賃7万円、光熱費1.5万円、食費など4万円、帰省が月あたり2万円。合わせて月14.5万円の増加です。
生活費は41.5万円になり、下限は124.5万円に上がります。1.54倍です。生活の場が2つあるなら、収入が止まったときに支えるべき生活も2つ分になるからです。
手当は収支を埋めるが、下限は動かさない
手当がない場合、毎月の収支はプラス10万円からマイナス4.5万円に転落します。貯金は毎月減り始めます。
ここに月5万円の手当が出るとします。手当は原則として課税対象なので、手取りでは4万円ほどの増加です。これで収支はマイナス0.5万円まで戻り、ほぼ均衡します。
ところが、下限は124.5万円のまま、1円も動きません。
手当は収入であって、生活費ではないからです。生活防衛資金が想定しているのは収入が止まった状況なので、その計算では手当も給与と一緒に消えます。残るのは2拠点分の生活費だけです。
手当は毎月の穴は埋めます。備えておくべき金額は、埋めません。
マイナスなら、金額より符号を見る
この家庭の貯金200万円は、上がった後の下限124.5万円をまだ上回っています。すぐ困る状況ではありません。
ただ、手当を入れても収支はわずかにマイナスです。金額としては月0.5万円ですが、プラスとマイナスでは意味が違います。マイナスである限り、時間が経つほど下限に近づいていきます。親の介護が始まったときと同じで、まず符号を確認するのが順番です。
期間が決まっているのは、有利な点
単身赴任には、介護や金利上昇と違って、おおよその期間があることが多いはずです。
これは判断のうえでは有利です。3年なのか5年なのかが分かれば、「毎月いくらまでのマイナスなら、終わりまで下限を割らずに済むか」を逆算できます。
その金額が分かっていれば、赴任先の家賃をどこまでかけてよいか、帰省を月何回にするかを、感覚ではなく条件で決められます。