賃貸と購入のどちらが得か、という比較は昔からある論点です。ただ、この比較は「何年住むか」「物件価格がどう変わるか」「金利がどうなるか」といった前提の置き方次第で、いくらでも結論が変わってしまいます。数十年先の総額を精密に比べようとするより、先に確認できることがあります。
比べやすいのは、毎月の固定費と、最初に出ていく現金
前提を次のように置いてみます。
- 現在の現金: 500万円
- 手取り月収: 35万円 / NISA積立: 月3万円
- 賃貸の場合の固定費: 月16万円(家賃12万円を含む)
- 生活防衛資金ライン: 生活費の3ヶ月分
購入した場合、家賃12万円がなくなる代わりに、ローン返済に加えて管理費・修繕積立金・固定資産税が発生します。これらを合わせて月14万円相当になったとすると、固定費は月16万円から18万円に増えます。毎月の収支は9万円から7万円に下がり、生活費が増えた分だけ防衛ラインも69万円から75万円に上がります。
購入時の初期費用として、頭金300万円に加えて諸費用(登記費用、ローン手数料、火災保険料など)が200万円かかり、合計500万円を支払ったとします。この場合、直後の最低残高は7万円まで下がり、75万円の防衛ラインを大きく割り込みました。12ヶ月後でも84万円と、ようやくラインを超える程度です。
頭金の額を変えると、結果は変わる
同じ条件で、頭金を抑えて初期費用の合計を300万円にした場合、直後の最低残高は207万円となり、防衛ラインを大きく上回ったまま推移します。12ヶ月後の残高は284万円です。
頭金を多く入れれば借入額が減り、総返済額は抑えられます。ただ、その分だけ購入直後の現金が薄くなります。住宅は購入した直後に修繕や家具・家電の買い替えといった追加の支出が発生しやすい時期でもあるため、ここで現金が尽きていると、結局ローンやカードで補うことになりかねません。頭金を払った後の回復については、住宅購入の頭金を払った後、生活防衛資金はどう回復するかで詳しく扱っています。
「買えるか」ではなく「買った後も回るか」
住宅の購入可否は、審査に通るかどうか、月々の返済が払えるかどうかで語られがちです。ただ、実際に確認しておきたいのは、購入した後に毎月の固定費が増えた状態で家計が回り続けるかと、初期費用を払った直後に防衛ラインを割らないかの2点です。
この2つは、数十年先の総額と違って、今ある数字だけで確認できます。総額の損得は前提次第で動きますが、購入直後に現金が尽きるかどうかは前提に関係なく効いてきます。先に確認しておく価値があるのは、こちらの方です。