住宅ローンを組んでいる間、繰り上げ返済は「早く返すほど利息が減るので得」という前提で語られます。基本的にはその通りです。ただし、住宅ローン控除を受けている期間だけは、もう一つ考えるべき要素があります。
控除額は「年末時点のローン残高」で決まる
住宅ローン控除は、その年の年末時点のローン残高に一定の控除率をかけた金額が、所得税(引ききれない分は住民税の一部)から差し引かれる仕組みです。控除を受けられる期間や控除率、対象となる住宅の要件は入居した年や住宅の種類によって異なりますが、残高が基準になるという構造は共通しています。
つまり、繰り上げ返済をして残高を減らすと、その年の控除額もその分だけ小さくなります。利息は確かに減りますが、同時に戻ってくる税金も減る、ということです。
「返す」か「持っておく」かの判断が変わりうる
このため、控除期間中は次の2つを比べる必要があります。
- 繰り上げ返済によって減る利息
- 繰り上げ返済によって減る控除額
ローンの金利が低い時期に借りている場合、1が思ったほど大きくならない一方で、2はそれなりの金額になることがあります。この場合、控除期間が終わってから繰り上げ返済をする方が、合計では有利になる可能性があります。
もっとも、金利の水準や借入額、適用される控除率によって結論は変わります。「控除期間中は繰り上げ返済しない方が得」と一律に言えるわけではないので、自分の借入条件で確認する必要があります。
期間短縮型は、控除期間そのものを縮めることがある
繰り上げ返済には、毎月の返済額を変えずに完済時期を早める「期間短縮型」と、期間を変えずに毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」があります。
このうち期間短縮型で返済期間を大きく縮めると、住宅ローン控除の適用要件である返済期間(原則10年以上)を下回ってしまい、その後の控除が受けられなくなることがあります。控除期間中に大きな繰り上げ返済を検討する場合は、返済後の残り期間が要件を満たすかどうかを事前に確認してください。
損得の前に、手元の現金を確認する
ここまでは税金の話ですが、繰り上げ返済にはもうひとつ別の側面があります。繰り上げ返済に回した現金は、基本的に手元には戻せません。控除額との比較で数万円の差を検討する前に、返済後の手元の現金が生活防衛資金を割り込まないかどうかを見ておく必要があります。
この点については、繰り上げ返済と一括投資は、手元の現金から見ると同じことをしているで具体的な数字を使って試算しています。税制上の有利不利は条件次第で数万円単位の差ですが、現金が足りなくなるかどうかは、それより先に効いてくる問題です。